八重島かおる2004
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赤のおに
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「マスターもうじき誕生日ね」
くてんとあいかわらず酔っ払ったかっこうでカウンターにひじをつく
「ええ、月嶋さんは先月でしたね」
「そぉよーまたここでつぶれちゃったけど」
うふふと笑うその赤の女性を男は目を細めて笑い返す
「ふふ それもいいじゃないですか
(もの壊されるのは嫌なんですけど)毎年ここで年を重ねてくださるだなんて商売冥利に付きますよ」
「マスターさぁ、いつもたいへんよね」
「お店のことですか?」
「そ 色んな人が毎日来てさちゃんと接客してるじゃない」
「そうですね」
筆頭はあんただと内心思うが、それをにこやかに覆うのがプロ
「・・・・・・マスターが困った時眉毛が上がるのよね」
「えっ!?」
「今も困ってるでしょ?」
「いえ」
内心どきどき
「大丈夫です」
「・・・・・・嘘吐く時主語が無くなるのよね」
「!!!」
「知らなかったぁ?」
けらけらと笑いグラスを飲み干しコトンとカウンターに戻す
「サンセット、ね」
「はい」
言われるままにおかわりを作り始めると
「ここでしか飲めないわね」
艶やかに微笑まれ、その怪しさに毎度のことながら当てられそうになる
「ここでしか飲めないじゃないマスターのお酒」
「月嶋さん−−−」
なんかこう嬉しさと感激でつきあがるものを感じたとき
「だから、『私の』おさけ、きらさないでね」
にーっこりと言われて
まるで子鬼のような笑顔で言われたらこうとしか取れない
−−−これは挑戦なのだろうか
「乾杯っ」とウインクさえ寄越しその赤の鬼が飲み干すのも赤で
「受けて立ちましょう?」
その印を丁重に受け取る
だから毎年私の誕生日にもこの店で………
−−−fin 12月24日
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