真神恭介2005

***前提条件
しつこい様ですがこれは女性向き、しかも対森川です

大丈夫じゃない方はレッツ バックブラウザでっ
***



ふと時計に目をやると偶然なのか間際で
ちょうど今短針と長針が重なり、日付が変わろうとしていた

「いち・・・ぜろ」

つい数えてしまった時間
今日俺は誕生日を迎え、また年を1つ重ねたことになる

毎年来るはずのこのなんでもないけど自分の生まれた意味を考えさせられる日は
楽しくて気恥ずかしく、そしてこの上なく嬉しい


今年もいい年になるといいな


初詣のときのように騒いでお参りなどはしないけれど、
俺だけの時間、自分とかかわる時間が幸せであってほしいと思うのは俺だけじゃないんだろうな


「さ、寝るか」
ふわふわと気恥ずかしさと幸せに身を寄せているうちに今日は眠りにつこうと布団にもぐりこむと
携帯にメールが入っていた


「あ・・・」





−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−− はっぴーばーすでいはだれから −−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−

***未承認広告*** ココをクリックしてあなたも幸せに・・・ ・・・・・・・・・迷惑メールか 一番最初にこんなんで、凄く幸先悪いんだけど・・・ むかついたので速攻メールを消去する −−−−−ちょっと待て・・・・・俺、誰からを期待していた? 心の穴に気づいて恥ずかしくなる 「・・・・くれるわけないじゃないか」 あいつが俺にメールしてくるわけない あの取調室での件で少しは近くなったと思っていたのはやっぱり俺だけで 次に会った時はもういつものあいつだった 嫌味なことしかいわなくて、噛み付いてきて 「噛み付くって言葉、あいつのためにありそうなんだよな」 想像して笑ってしまう 『ココをクリックして』、か 今充分幸せだけど、十二分というか・・・ただひとつの望みは叶えられないし あいかわらずムカツクし ピリピリピリ・・・ またメールか ***未承認広告*** ココをクリックしてあなたも幸せに・・・ ・・・同じだし・・・しつこいな でも・・・ −−−−−、・・・わかってるよそんなこと これって悪質だって言うし、変なサイトに通じてるんだって でも・・・幸せ、かぁ このページの先になにがあるのかなんて見たやつしかわかんないんだよな はずれってわかってるけど 「誕生日だし、いってみるようかな」 ちょっとしたイタズラ心というのか、俺はいつもと違った心境で その迷惑メールのアドレスにリンクしてみることにした リンク開封 ようこそおいでくださいました あなた様へのメッセージが届いておりますのでどうぞコチラからアクセスください ・・・・・?メッセージ・・・・? 初めて入室したのにメッセって・・・・・ああ、そうか。 これにアクセスすると法外な料金を取られるってあれかな? どうしよう・・・まだ大丈夫そうだけど どうしよう−−− 折角アクセスしちゃったし、ついでだから繋いじゃおうか(←ばかだ) リンク開封 『今日あなたに幸せが舞い降ります』 ・・・・・・・・・なんだこれ? そのまんまじゃないか 「やばい宗教より下な言葉だし」 あーつまんないもの見てしまった 自分が侵入したんだけどさ 「こんな言葉見るためにドキドキしたのか俺」 ちょっと泣けてくる 「しかも誕生日にこれか・・・いや自分が悪いんだけど」 法外な料金とられちゃうのかな・・・・・ 撃沈されガックリとうなだれながら布団に丸まって寝てしまうことにする 「寝よ。寝て忘れてしまおう」 それしかない 勝手なメッセを反芻しながら朝の目覚ましをセットする ピンポーン −−−−−!? 本格的な寝の体制に入った時家のチャイムが鳴った ビックリして布団の中から耳を凝らして周囲を伺う −−−−−っ 続いて何かの叫び声が聞こえてきて おまけにドンドンと扉を破壊する勢いでたたかれる っなんなんだ!? 近所の酔っ払いか? うっわー、俺って本当運ない男なわけ? くじ運と言うか貧乏くじもここまでいくと特技になるかもしれないな つまらないことを考えながら音が止むのを待つ もしかして俺も酔ったときってこうなのかな 記憶結構ないし・・・ごめん哲平 と謝罪なんかもしたりして −−−−−っ ゴトン ・・・・・終わらないんですけど、外の襲撃 近所迷惑な人だなぁ 俺の家のドア叩いてるから近所は俺の知り合いだって思ってるかも ・・・・・・・ 「あーもうっめんどくさいなぁ」 絶対俺の知り合いじゃない・・・と思うけど、周りに迷惑かかってるんじゃ困る 俺も眠れないし しぶしぶ俺は布団から抜け出し注意を促すために玄関を開けた 「あのー、すいません部屋間違ってますよ−−−」 「・・・・・んぁ?違うーーー?って」 開けた途端になだれ込んでくる物体 ていうか体だったんだけど うわっ酒臭せっ!!しかもタバコ臭いしーーー(泣 もー最悪だ!! 「あのすいません、ココあなたの家じゃないですよ」 ドアノブをもったままうなだれるような格好でうつむく人影に早く帰れと忠告すると 「あたりまえだー!!こんなところ俺の家なわけあるかぁ!!」 グワっと睨まれた 酔っ払いに睨まれてもあまり驚きはしないんだけど 俺は違った意味で口が塞がらなくなった 「何してるんだ?お前・・・・・」 確認してからの第一声は間抜けにもそれ その言葉しか思いつかなかったし、その言葉しかこの場に似合わなかったから 「なにだぁーーー?プレゼントだよ、プレゼン・・・ト」 そいつはそういいながら一歩にじり寄り、それからぷっつりと切れたように 倒れこんできた 「うわっ森川!?」 思わず倒れるのを阻止するように両手で押さえると、やたら重くて震えている マズイ、まさかこれは・・・・・ 「ここで吐くなよ!?頼むからーーー!!」 「う・・・」 「や、ちょっとーーー」 「うぅ」 「もりかわぁぁぁ!!!(泣)」 静止の声もむなしくしゃがみ込んだ森川は 「・・・吐くかばか」 やけに低い声で俺を早速ばか扱いしてきた ほーーーーー、と気が抜ける いやだって、玄関先で吐かれたら後(跡?)の惨劇が目も当てられないじゃないかって 本気で思ったから 「だからって、お前本当になにしにきたの?」 こんな時間にだ しかもこいつの方から来るなんて酔っていてもあり得るはずがなくて その質問の回答なのだろうか 同じ目線に座った俺のシャツの裾がクンっとひっぱられ 「うわっ!?」 「プレゼントだっていったろ?」 肩をゆっくりと押されて 「ちょ−−−!?な、もり・・・・・」 玄関先で、扉もまだ開いたままだっていうのに 俺は こともあろうか 森川に 押し倒された だけじゃなく 「・・・え?」 わずかに傾けられた顔が急接近してきて、同じようにわずかに開いた 森川の唇で塞がれた 「っん−−−!!」 ちょっと待てってば なんなんだよこいつ 不意に襲う柔らかい感触に酔うどころか 「お前酒臭いっての!!ちょっと離れろよ!!」 残り香の方で悪酔いしそうだった 抱きつかれたのをひっぺがすと、森川の朦朧とした視線とカサリと切れるような感覚がよぎる 「・・・・・?なんだ?」 支えた左手に触れた物をペリっと剥がすと 『誕生日だってな、おめでとさん おじさんからのプレゼント 一晩小僧に貸してやる』 ひ・・・・・氷室さん!? 森川は背中に堂々と氷室さんからの伝言を背負っていた てかこいつこんなメモ付けたままここまで来たのか!? それに「貸す」だなんて−−− 「おいっ!!森川っ!?どういうことだよっ」 貸すって事はもともと「氷室さん」のものってことなのか? それで誕生日だからって俺に−−−−−!? ・・・・・俺もしかしてなにか間違ってる? 「んあ?なんだたんてー、お前うるさい」 定まらない焦点を俺に向け、黙らせるためにか再度シャツをひっぱられ塞がれる まずいって とにかく玄関だけは閉めないと−−− 誰かに見られたら俺(達)かなり変なヤツなんじゃ・・・ こんな騒ぎ起こしてるから、もう充分遅いかもしれないんだけど 俺は森川を抱えたままずるずる移動し扉に手をのばして ぱたん・・・ なんとか外界との接触を遮断した 「ん」 遮断するのと暗闇に舞い戻ったことで思考が動き始めて状況分析をする なんでこいつがここにいる? なんでこいつ俺と なんで氷室さんこいつを−−−? 考えることは考えるんだけどどうにも結論には行き着かなくて 「てかお前なんで酒のんでるんだよっ!?」 酒とたばこ臭さで考えなんてまとまるわけがない 塞がれていた唇が解放され熱く熱もった吐息が・・・酒くせーよ(うぅ 「ひむろさんが、いけってうるさくてー」 とろんとした目が俺を睨みながら言う 「今日メシめずらしく誘われてー、んでお前たんじょーびだって」 ああ、そうですか 「いってこいっていわれたら、いくしかないだろーが」 「それで?お前氷室さんに『俺にキスしてこい』なんて言われてきたの?」 半目になって言ってみる。 だって呆れもするじゃないかこんなこと 『誰かにいわれたから』で『酔った上の襲撃』をしてくるだなんて しかも命令の主は氷室さんで・・・ 実際こいつからこんな風に、というか自宅に来ること自体があり得ないんだけど 触れられて・・・ 「んなことあの人が言うかーーー?!」 それもそうだ。だったらなんで? 酔ってるヤツに何言っても聞いてないだろうけど 「なぁ森川」 悪酔いしたこいつに問いかけてどうするんだ、なんだけど 「じゃあお前の意志って思っていいの?」 ちょっとの期待を込めて聞いてみる だけどその問いには森川は答えず、ふらふらと壁をつたって立ち上がり 「・・・・・ふろ」 「へ?」 「きもちわるい・・・風呂どこだ」 そんなことを聞いてくる 「・・・あっち、だけど。湯はってないよ?」 あまりに脈略がない話の流れだったから俺は逆にそのまま答えてしまって 「そっか」 ふらふらとそれにつられたかのように森川は浴場に足を向けた 「・・・・・っておいおいおいおいおい!!!?」 ふらふらと 「待てって!!お前服来たまま風呂入る気か!?」 着の身着のまま脱衣せずに入室しようとするのでそれを止めると 「う・・・・るさいやつだな そんなに気になるならお前が脱げばいいだろ」 「あーのーなぁ」 それじゃ意味がないだろ。俺はさっき入ったんだし 「ほら、靴」 「ん」 素直に脱ぐ 「次コート」 「ああ」 けれど素直なのはそこまでで 「あたまいたい・・・」 ぼそりと残して止めた俺の声を無視してぱたん・・・と扉を閉めてしまった 「・・・・・あーぁあ」 目が当てられない事になっているのは間違いない 浴室からはジャージャー音を立て水が流れている スーツまでは脱がせる事ができなかったから 「間違いなくびしょぬれなんだろうな」 かわいそうに・・・なんてちょっと慈悲の気持ちが広がったけど 自分で入って自分で浴びてるんだからしょうがないよな 「・・・考えたくないけど、もしかして俺も同じ・・・?」 ぞっとするような想像が脳裏によぎってそっちのほうがうち消したい事実になる 「森川ぁ、大丈夫か?」 こんこんと扉に手を当て中の様子をうかがう もしこれで酔いが醒めてきていたらいいんだけど ・・・・・いいのだろうか? 醒めたら醒めたでやっかいそうだけど 「・・・・・さぶい」 「え?」 「凍りそう」 「な・・・ってお前水!?」 まさかっ!? まさかそのままひねって水浴びてるとか−−−!? 勢い任せて風呂の扉を開けると 「やっぱりぃぃぃ・・・のばかっ!!大丈夫か!?」 真水よりも冷たい冬の水が凍る勢いで流れ出ていた 「酔ってるからってそれはないだろお前っ」 ギャグかなんかと間違えてるんじゃないかこいつ そんなことを思いながらも急いで蛇口を止めタオルをかぶせる 「大丈夫か?こんな冷たい・・・」 ぽたぽたと前髪から滴が落ちて俺の足にもその水がはねる つ、つめたい 泣きそうに冷たいんですけど じわじわと足裏に伝わる床の冷えた感覚が俺を徐々に麻痺させる 俺がこんな少しで冷たいって事はこいつはもっと・・・ 「だ、だいじょうぶだから触るな」 「震えた声で何言ってるんだ!?いいから服脱げ このままじゃ風邪引くって」 「お湯」 「え?」 「さむいからお湯くれ」 「だめだって、急寒暖は体がおかしくなるから。それよりちゃんと拭いて」 頭にかかったタオルの上から髪を拭きなでると 「触るなっていっただろ!?誕生日のヤツはおとなしくしてろってのにっ」 ふんっと鼻息荒く断られてしまった ・・・てことはこいつまだ・・・・・酔ってるんだな ぺったりと水分をすったスーツがずいぶんと重そうに森川の体に張り付いて ネクタイなんかは色が変色していた 「わかったよ、触らないからちゃんと拭こ?」 酔ったこいつなんて初めて見るけど、酔っぱらいなんてどいつも変わらないだろう だから成美さんを扱うのと同じように腫れ物を扱うように・・・ いや割れ物を扱うように命令ではなくお勧めをする 「んー」 そうするとやっぱり子供みたいに素直に聞いてくれて 変色したネクタイをゆるめてその重い上着を脱ぎ始めた 「ちゃんと脱いだら拭けよ?」 言い残し俺はといえばバスタオルととりあえずの替えの服を探し集める サイズって俺より・・・とあんまりかわらないよな、目線同じくらいだし 幸いにして俺も森川もいわゆる平均的体質で 取り立ててでかくも小さくもない 「よかったよ、氷室さんとか諏訪さんだったら絶対俺の服きれないもんな」 俺の服をパツンパツンの状態で着る氷室さんを想像してちょっと笑える 「たんてー寒い」 「はいはい、ちょっと待って」 慌てて浴室に戻れば頭からタオルをぬーっとかぶったまま しかも上着はスーツしか脱いでいないじゃないかぁ!? 「寒いに決まってるだろ!?いったいお前何しに来たんだよ!!」 あまりに言うことが通じないこの酔っぱらいに段々と腹が立ってくる 最初はあんな状態で、しかもあんなことされて度肝を抜かれたけれど 限界ってのが俺にもある 「あー?」 俺の怒りめいた言葉に反応したのか濡れたままの顔がこちらに向けられ 「ぷれぜんと、しにきたんだよ」 「だからなんだよそれ?」 さっきからそればかりで本当は何をしに来たのか いくら酔っているとはいえ、意味もなくここにはくるはずないだろ って、俺も人のこと言えないんだろうけど 「誕生日なんだろー?」 「・・・うん、一応」 「・・・・・あの時お前『もっと時間が欲しい』っていったから」 「・・・・・あの時?」 「それいったら氷室さんが『じゃあいってらっしゃいっ』っていうからきた」 「・・・・・なんだよそれ」 「なにが」 「氷室さんに言われたからきたのか?」 「・・・・・」 「あの時って−−−あの取り調べの時のこと?」 数ヶ月前を思い出す あの時確かに部屋を出る直前にそんなことを言った だけど 「それ氷室さんに話したって」 「あー、さっきメシ食ってるときに」 「人に言うことかそれ?それになんだよお前」 「なにがだ」 怒りというか嫉妬というか、嫌な心理が生まれていた 「氷室さんに言われてきたって、お前氷室さんに言われなかったらこなかったし 俺とのあれ氷室さんに平々といえちゃうくらいどうでもよかったんだ!?」 あー、誕生日なのに最悪 なんで俺こんなこと言ってるんだよ なんで俺こんな感情持たなきゃいけないんだよ なんでこいつがここにいるんだよっ 幸せに だなんて、やっぱりあれ迷惑メールでしかない 全然嬉しくないし、逆にこいつがきたことで嫌なこと思ってばかりじゃないかよ 「だったらどうするんだー?」 まだ酔いにおぼれたその視線を見てガックリとなる 冷静になれよ自分 こんな酔っぱらいに翻弄されてどうする 探偵は冷静さが一番だろ? 取り戻す為に目を背けると今度は濡れたシャツから透けた肌の色が入ってきて ・・・・・だめじゃん自分 冷静どころかちょっとやばいこと考えそうになる 手を出してくるなよ?森川 絶対押さえられないから 今触れてなんかきたら−−− バサッと拭うためにバスタオルを森川の体にかける 「頼むからもうお前飲むのやめてくれ・・・」 心臓に悪い 早く乾かして追い返そう 理性が勝っている内に 氷室さん、あなたからのプレゼントは返却します 俺には荷が重すぎる よかれと思ってしてくれたんだろうけど 酔ったこいつはあまりに無防備になりすぎていて しっかりしよろ俺!! 「たんてー?悩み事か?」 もんもんと自己問答している時に間の抜けた森川の声が聞こえて いいかげんプチンと切れる 「お前が余計なところで出てくるからこんなことになったんだっ!!」 「・・・・・ばーか」 「な!?」 「俺がほしいんだろ?お前」 「・・・・・は?」 言い返そうと身構えたとき、またもすそを引っ張られ 止めるまもなく少し酒のにおいが消えた唇が俺に重なってくる あーだめかも お前が悪いんだからな 俺ちゃんといったのに なのにわかっててお前が仕掛けてくるんだから・・・覚悟して 一応心の中で謝罪しておいて 今度は逆に俺が唇を割って進入させた 「・・・ん」 ぴたぴたと滴の落ちる前髪が邪魔でくすぐったくて 「森川、ちゃんと乾かそ?」 タオルで頭を拭いてやりながら、合間合間に吐息をすくう 壁に押さえつけるような形で森川を奪っていくのはちょっと恥ずかしい こんなに抵抗のないこいつは初めてで 「最後まで・・・もらってもいい?」 本人の確認を得ないと後で殴り飛ばされるといけないから 口づけの合間に問いかけると 答えの代わりに背中に腕を回されて更に深い物へと変化させてくる 俺ずるいなぁ こんな状態のやつに聞いてもなんの効力もないこと知ってるのに でもこんなこときっとそうそう巡ってくる事じゃないから 幸せが舞い降りる これのことなんだろうか? ・・・そうなんだけどそうじゃない だってきっと俺、明日になったら罪悪感ばかりで幸せなんて感じていないから 「・・・・・っ」 張りついたシャツのボタンをはずして脱がせると 滴に濡れた色が一層鮮明で戸惑いが生じる ダメだってこんなことしちゃいけないんだって、ざわざわと攻め立つ理性が教えて 「風邪、ひくな」 これ以上は無理だと自分に言い聞かせるためにバスタオルでその身を覆ってやる 「ごめん、俺どうかしてた」 本当に全部奪いそうになっていた自分がいる こんな酔って正体のないヤツに手をかけようなんて しかも森川に−−− 「さぶい」 「ん、だからちゃんと乾かして着替えよ?」 「でも酒臭くて気持ち悪い」 「タバコのにおいも充分な」 「湯・・・浴びたい」 「だめ」 「後で乾かすから」 「いう事聞いて、頼むから」 これ以上この場にいたくないんだ 「・・・わかった、もう頼まない」 「え?−−−わわっ!?」 パシャーーーーーーー!!! 「ぶはっ、な・・・!?」 「頼んでダメならやるまでだーーーー!!」 「森川お前っ!!」 森川が耐え切れなくてお湯の方の蛇口をひねったらしい 結果気づいた時には俺もまきぞいくってびしょ濡れで 「ふふん、これでさむくない」 「まだ酔ってるのかよ・・・もう二度とお前酒飲むな」 あーあぁ、タオルまでまた濡れちゃったじゃないか ていうか俺もこんなまた水浴びさせられて風邪ひくっての 「どうするんだ?」 「はぁ?なにいってるんだよ」 「いらないなら帰る・・・」 寒さから逃れたためかぼんやりと座る目がゆっくりと俺を確かめる 「正気の時は鈍感だし、拒むくせに」 「あー?」 理解してないよな当然・・・ 「なんでこういう時に的確なんだお前」 ばしゃばしゃと降り注ぐ温かいシャワーが静止していたものを溶かしていく 「・・・頼むからもう酒のむなよ」 ちゃんとシラフの時に同意されなきゃ意味がない 俺のことどう思ってるのかちゃんと聞きたいのに 「くれるなら、もらっておくから帰るな」 濡れたタオルごと壁に押しつけて唇を重ねた 流れてくる水は雨のように止まらなくて、でも雨とは違って冷たくなくて 「っは、っむ・・・ん」 漏れる声が湯気に反響して怖いくらい俺はどうかなりそうだった ちゃんと布団に行けばいいんだけど、この濡れた状態から一瞬でも離れたら こいつが正気を取り戻してしまうんじゃないかって思って雨粒を喰らう 取調室の時に応えてくれたのとは比べようもないくらい森川は従順で 「醒めないで」 願ってしまうほど俺の思う以上の反応を返してくる 既に抜け落ちた体をころがしても嫌がるどころか 「ん、ぅぁ」 感度を示してくれて、俺も正気を手放していた 髪からこぼれ落ちる滴がお互いのつながった箇所からしみこんで同じ液体を飲み込んで 自制が利かなくなった俺と、酔ったままの森川はそのまま浴室で絡み合う プレゼントがこれなのかな・・・ 色が色と認識できなくなる直前、俺はふとこいつの言った「プレゼント」という単語を思い出す 確かに俺にとっては嬉しいような悲しいような体験なんだけど 「だけど森川・・・お前ここで身を削る必要なんてないだろ?」 気づいてるよ、ちゃんと俺 言われたから来たんだよな、酔っていたからこんなにも俺に預けてくれて だから起きたら謝ろう 「・・・・・ごめんな」 そうすることしかできない 風呂場で酒と湯気に当てられのぼせたのか半分気を失うように倒れ込んでしまった森川 ・・・俺のせいでもあるのか その髪を乾かして布団に寝かせると、俺もどっと疲れが出る 「酔っぱらいの世話はするもんじゃないな」 飲んでも飲まれるなって言葉、案外こういう時のためにあるのかもしれない ・ ・ ・ ・ 翌朝起きると森川は熱を出していた 「水なんてかぶるから風邪引いたんだな」 「・・・なんで止めなかった?」 「止めたよ?でもお前無視して勝手にシャワーあびちゃうから」 「・・・・・あたまいたい」 夜と同じ言葉を聞いて顔がゆるむ いや、風邪引いて大変なこいつに対して笑っては失礼かもしれないけど 自業自得だし・・・俺もちょっと荷担したかもしれないけど ・・・・・覚えてないのかな? その浴室で乱れたことをこいつは言及してこない ってことは 「忘れてる?」 「んー?」 布団から半分だけ顔を出して苦しそうに答えを返すその態度がいつもと全然違って おもわずてのひらをその汗ばんだ額に添えてしまう その行為に怒られるかなと思ったけど、意外にも 酒ではなく熱によった森川の目がきゅっと閉じられて 「うけとった?」 小声で訴えられた 「・・・・・・・・・覚えてるのか?」 「−−−−−!?」 自分で言ったくせに俺の反応に驚いて顔を背ける森川 でも 「うん、ちゃんともらった。ありがと」 森川の手は俺の裾をつかんだままで放してくれなくて 幸せが舞い降りる 今俺ちょっと・・・いやかなり体感しています 迷惑メールが運んできた幸せなんて笑っちゃうけど、誕生日だし 俺にもいいことあっていいんじゃないかーって あぁそうだ。これ運んできたのは迷惑メールだけじゃなかったっけ そろそろかかって来るであろう相手 その人にもちゃんとお礼を言っておかないと プレゼント確かに受け取りました でも返却できません っていったらあの人・・・どうするかな? 慌てるかな? いうねぇ、とかいって笑い飛ばしそうでもあるけど 「な、今日俺も一日休んでもいい?」 「・・・勝手にしろ」 この風邪っぴきの酔っぱらいにちゃんと責任取って貰おう こいつが嫌だって言うまでは、な ・・・・・嫌だなんて言わせないけど −−−fin 1月30日

SEO [PR] 爆速!無料ブログ 無料ホームページ開設 無料ライブ放送