真神恭介2006

***前提条件
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一応続き物になります
話の終わりに前作へのリンクをつなげておりますので、よろしければそちらもご確認下さい
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「ジリリリリ−−−!!」

けたたましく鳴るベルを手を伸ばして引き寄せる

「・・・う、うぅぅ」

いつだって起きるのはちょっと辛く思うけどしかたない
朝は必ずやってきて


「ふ、うわぁぁぁ・・・・・・」


暗い夜は必ず終わってしまうから


だから
だから−−−



今日俺はまた年をひとつ重ねる














−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−− 最後の晩餐 −−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−

部屋の窓を空け空気を少しだけ入れ換える いつもと同じ朝 いつもと同じ風景 いつもと同じ俺 でも少しだけ違った思いで今日を迎える 「誕生日か・・・・・」 何度巡っても俺にとって俺だけの記念日で そして今日も同じように記念となり −−−それも今日終わる−−−・・・ カーテンがふわふわと揺れていて それにつられるように降り仰ぐと 冬の寒さを緩めたような穏やかな風が吹いていて 「ばか・・・−−−だろ?」 思わず声がこぼれてしまう だってそうだろ? 決断も決意もとうに終わっていて 俺は今日という日が来ることを ある意味望んで、ある意味一生来て欲しくなくて 来ないって事は逆にすると意味がなくなってしまうことになるんだけど 「そろそろ、実行してもいいよな?」 誰に問でもなく しいていうなら俺自身に確認する 相手の想い、周りの空気、俺の意志−−− どれをとってもバランスが悪くて 動く前から最悪の形、ってのを想定しているんだけれども 「でも、28になったから・・・・・」 それは最初から決められていた事のように ある日を境に俺の中に渦を巻き 俺はそれに向かってひた進んできた 今日だけのために 「−−−と同じ年になったから」 顔を洗ってトーストを焼いて、コーヒーをすすって玄関を開け いつもの日常が進み始める 「おはようございます」 「今月何度目だ?おそようさん」 「真神くん来月また掃除番よ?」 事務所に着いても毎日の時間が通過して −−−まるで俺だけ取り残されたような気分 凄く変だ かなり浮いた気分 「っく、くくく、はは」 変さ加減にちょっと笑いも洩れる だってそうだろ? 誕生日って人間がどうしてこんな気分でいるんだろうって もっとこう浮かれすぎても誰も文句言わないはずなのに 今日の俺はいつもに増してのんびりと構えて こんな日なんだからもっと焦ってもいいはずなのに 「っふ、実際やっぱり俺って緊迫感が抜けるやつなんだな・・・」 「恭ちゃん怖い」 「!!」 「何一人で思い出し笑いしと?」 −−−っな!?なんで思い出し笑いになるんだよ っていつもなら街中で降って沸くような声にはこんな返事をしてしまいそうになるんだけど 「いや、どうした哲平?」 笑いの筋肉が俺の顔を解放しない 「恭ちゃんが笑顔−−−どないした?ほんま怖いで?」 「何言ってるんだ、今日、俺単に機嫌がいいだけだよ」 下手な言葉を使っていいなら 運命、なのかな? ここで哲平に会うのはきっとそれも定められた道で 最後の晩餐 そんな言葉がふっと頭に浮かぶ たぶん目の前のこいつも、事務所のあの人たちもきっと知らない 言えば絶句して、その後のことなんて容易に想像が付く 俺だって直面したら驚きと、それから−−− だから 「せっかく会ったんだし、メシ一緒に喰ってくか?」 「サイバリア?」 「他に行きたいところあればそっちでいいよ、奢るし」 「え!?−−−ほんまどないした?おかしない?」 「おかしくない、おかしくない、お礼、だよ」 笑って言ってやる 「??」 理解されないよな、きっと でも俺にとってはお前と、今日、この時間に会えたのは偶然だけど お前にだけは伝わるものがあるって思ってるから 午後になって更に時間が加速して 「じゃ、お先に失礼するわね?」 「あ、はい」 「戸締まり頼むわ」 「お疲れさまでした」 あっという間に俺の日常が終わっていく あっという間に非日常の時間が迎えにくる ガチャン−−−っ 軽くも重くもない扉を開けると しっとりとした気配だけが闇から手を伸ばしているだけでそこは無と等しい空間 「−−−−−−−飯、喰ってからじゃまったりしすぎてダメだよな」 悩んで悩んで 胃が痛くなるくらい考えた時もあったし 実際今だって悩んでる だけどな? ふらふらと窓際に寄っていくと これでもかって言うほど大きな月がぽっかりと全てを覆っていて 「見納めか・・・」 不意にこみ上げてくるものがある 月に感化されたのか それとも別の何かか そんなの俺自身にもわからないけど パタパタと頬を伝わって落ちるもの 怖さはないのに相手がどうとるかって事だけが今でも不安で 「つくづく俺って自己中心的な考えするよな」 周りのことよりも、相手と自分のことだけが駆けめぐる いつもそうだった気がする 止められても「俺がいかなくちゃ」って言葉を使って まるで戦士にでもなった気分で挑んできた今までを振り返る 「無茶しすぎだ、お前」 ガラス越しに映った自分に言ってやる そうすると −−−だけど、これも最後になるんだろ? 涙を流したガラスの俺が烙印とも言えるべき言葉を伝えてくる 「そう・・・だな」 うん、そうだよな もういいよな 機も時間も揃った 後は俺が動くだけ−−− だから俺は +++選択してください+++ A.震える手で携帯を取り出した B.何気なく窓を開けた 震える手で携帯を取りだした 「ッピ−−−」 いつもと変わらない電子音 「トゥルルルル トゥルルルル」 いつもと変わらない呼び出し音 「−−−はい」 いつもと変わらない声 知らない 知るはずもない言葉で俺は全てを終わらせようとしている 「真神・・・です、今いいですか?」 「どうしたの?改まって」 くすくすと笑う声が耳をくすぐる いつだって俺はその声を頼りに頑張ってきたし頑張れたんだと思う だけど今日俺は、自分でそれを断ち切るのかもしれない 「電話で言うことじゃないし、 本当ならもっと早い段階で言うつもりだったんですけど」 「うん?」 じわり てのひらに暑く汗がにじむ 昼間あんなに冷静で決断なんてとっくの昔にしていたはずなのに ここに来て緊張という名の束縛が俺を捉える 「あ・・・あの、ですね」 「?」 これを言ったら全てが終わる そして明日からの俺と 俺との関係がどんな風に変わるか それは相手次第で−−− 「出会った時の年になったら言おうと思って」 「??何いってるのかわからないわよ?真神くん」 最後まで言い終わってもその口調は変わらずにいてくれるのだろうか 心臓が普段の倍以上の速度で運動しているのがわかる 「今日で、俺・・・28になったんです」 「−−−−−−!!やだ、ごめ」 「だから、だから京香さん」 「おめでとう、真神くん」 「俺と結婚してください」 「−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−」 「−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−」 もしかしなくても被った、よな 静寂をたたえた部屋に一言ぽつんと響いた言葉 自分の全てを切り裂いて、心臓をバクバクさせてまで言ってしまった言葉は 思い切りお互い被っていた 「−−−−−−−−っぷ」 「−−−−−−−−っふ」 でもきっと 「ふふふ」 「ふ、はは」 だからなのかな 「やっぱり真神くんは、真神くんよね」 「・・・そうみたいですね、−−−でも」 「うん、伝わったよ・・・−−−おめでとう」 「はい、ありがとうございます」 こんな風に大事なことをまともに言わせてもらえないのも 俺達はどこかで繋がっているからだって気がするんだ 結論を急かせるつもりはない けれど俺はずっと、俺が京香さんと出会ったときの京香さんの年になったら あなたといっしょにいたいって ずっと側にいて欲しいって そう言おうと決めていたから あのリングを渡した時からずっとずっと想ってきたから 今日を境にきっと俺の全てが変わってしまうんだろう 明日になったら「ごめんなさい」の一言で暗転している事もあったりで 逆に見る物全てが嬉しくて光り放つ綺麗な物に変化していることもありで それは選択という名の下ではごく当然起きうる事実でもあるから 「おやすみなさい」 「はい、また明日、ですね」 「うん・・・・・また明日」 「・・・・」 「・・・・」 「ッピ−−−」 どんな結果を招いたとしても 今日という日が終わり、そして今日という日が特別で でも来年からはこんな想いで過ごすこともないってことだけはわかる だからきっと、この気持ちで過ごした時間 最後の晩餐は、今日、この日だって いつか誰かに言うことがあるような気がする その相手が彼女であることを祈って 俺は晩飯の支度にとりかかった−−−− −最後の晩餐 select京香 END− >>前作 ▲ 戻る 何気なく窓を開けた いや、何気ないっていう事はないか することはもう既に決まっていて それが俺の中では定めのように毎晩見る夢の続きで 「今、いくから」 そこに居るわけでもないのに月に向かって囁く 止める人がいるってことはわかってる 逆だったら絶対俺だって止めるはず あの手紙だってまだきちんとしまっていて 再度読むことすら辛くて、あれ以来読んではないけど 「受け止めろ、なんて言わねぇよ、けど」 お前と同じ年になったら終わらせようと思っていたんだ この輪廻のような重く苦しい螺旋の繋がりを 「俺はこんなに時が過ぎてもお前を忘れられなかったから−−−−」 早いか遅いかだけ 方法は間違っているかもしれないけど きっと誰かに「そんなん間違ってる」って言われるに決まってるけど 誰かが俺なんかのために涙を流すって事もわかってるけど 「俺、自己中なんだなやっぱり」 お前だけをそこに居らせるのが嫌なんだ、森川−−− 何かを紛らわせるためにコップ一杯の酒を口に含む 「次に会ったときは、苦い酒かな?」 自分のしでかすことを苦笑気味で想像して、そしてちょっぴりの謝罪 そして 「さて、いくか」 触れた金属の手すりに指を滑らせて 腕に力を込める 身体がふわり、浮いていく 浮いた途端に 「ピリリリリ ピリリリリ−−−」 まるで引き留めるかのように 鎮魂歌のように どこかで携帯の音が鳴り始める ああ、ごめん 誰かは何となくわかる でも、もう取ることはできないんだ ピリリリリ ピリリリリ−−− ごめん ピリリリリ ピリリリリ−−− ごめん・・・ ピリリリリ ピリリリリ−−− ごめ−−−ん・・・それでも俺は−−−−− ピリリリリ ピリリリリ−−− 俺が求めた場所にいたいんだ −最後の晩餐 select森川 END− >>前作 ▲ 戻る

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